職場のパワーハラスメント相談窓口の設置と運用:中小企業の実務ポイント

職場のパワーハラスメント相談窓口の設置と運用:中小企業の実務ポイント

「相談窓口を設けたが、社員が誰も使わない」——中小企業の人事担当者の方からよく聞く悩みです。窓口の存在すら知らない社員がいるのではないでしょうか。設置しただけでは機能しない。労働施策総合推進法第30条の2が求める要件を、明日から実践できる形で整理します。

相談窓口設置が求められる根拠

労働施策総合推進法第30条の2の概要

労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下「労働施策総合推進法」)第30条の2は、事業者に対してパワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置を義務づけています。

この規定は令和2年(2020年)6月に大企業へ先行適用され、令和4年(2022年)4月1日から中小企業にも適用されました。現在は規模にかかわらず、すべての事業者が対象です。

事業者に求められる4つの措置

厚生労働省の指針(令和2年厚生労働省告示第5号)が定める措置は、以下の4項目です。

  • 事業者の方針の明確化と周知・啓発
  • 相談(苦情を含む)に応じ適切に対応するために必要な体制の整備
  • 職場におけるパワーハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
  • プライバシー保護・不利益取扱い禁止の周知

相談窓口の設置は2番目の項目に該当します。指針は「相談に対応する担当者をあらかじめ定めること」を具体的な対応として示しています。

相談窓口の設計:3つの選択肢

内部窓口・外部窓口・併用型

自社の規模・体制に合わせて、以下の3形態から選べます。

形態 メリット 注意点
内部窓口 コストを抑えられる・社内事情に詳しい 相談者が上司や同僚への遠慮から利用しにくい場合がある
外部窓口 心理的安全性が高い・専門家対応が可能 費用が発生する・情報連携に手順が必要
併用型 相談者が選べる・利用率が高まりやすい 運用ルールの整備が必要

社員数20〜50名規模の中小企業では、内部窓口を設置したうえで産業医や社会保険労務士と連携し、準外部的な機能を持たせる方法が現実的です。

担当者の選定と研修

内部窓口の担当者は、以下の3点を基準に選びます。

  • 相談者と直接の上下関係にないこと
  • 守秘義務を理解していること
  • 感情的に中立を保てること

人事部門の担当者が一般的ですが、小規模企業では経営者に近い人物が担うケースも多くあります。その場合は、外部相談窓口を補完的に設けることを一度検討してみてください。

研修教材として、厚生労働省の「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」が参考になります。

相談受付から対応完了までの手順

ステップ別の実務フロー

相談を受け付けてから対応を完了するまでの流れは、以下の6ステップが基本です。

  1. 相談の受付と傾聴(相談者の意向・希望を確認する)
  2. 事実確認の方針を相談者と合意する(匿名希望か・調査を望むかなど)
  3. 行為者側・目撃者等への事実確認(プライバシーに配慮しつつ)
  4. 事案の評価(ハラスメントに該当するか)
  5. 行為者への措置・被害者へのフォロー
  6. 再発防止策の実施と記録

事実確認は、相談者と行為者それぞれから個別に話を聴くのが鉄則です。両者を同席させると、相談者への二次被害を招く恐れがあります。

プライバシー保護と不利益取扱いの禁止

相談内容や事実確認の過程で知り得た情報は、対応に必要な範囲を超えて共有してはなりません。厚生労働省の指針も、相談者・行為者・関係者のプライバシー保護を明確に求めています。

相談したことを理由とした解雇・降格・減給・不利益な配置転換等は、労働施策総合推進法第30条の2第2項が禁止しています。就業規則と社内規程に明記したうえで、全従業員に周知しましょう。

中小企業が陥りやすい3つの落とし穴

現場で頻出する失敗パターン

残念ながら、相談窓口の運用を正しく理解されている中小企業の担当者の方は多くありません。20年以上の現場経験から断言できます。機能しない職場には、決まって同じ失敗パターンがあります。

①「窓口を設けた」だけで終わっている
就業規則に「相談窓口を設ける」と書いても、社員が存在を知らなければ意味がありません。年1回以上は全従業員に周知し、利用方法を掲示しましょう。

②相談者を特定できる形での情報共有
「○○さんが相談してきた」と部門管理職に伝えると、相談者の特定につながり信頼を失います。情報共有は「事案として把握した」事実のみ。相談者を特定できる形での共有は厳禁です。

③対応後のフォローアップ不足
初動対応で終わりにしてはいけません。1か月後、3か月後に相談者が安心して働けているか確認してください。それが再発防止と信頼確保の両方につながります。

ハラスメント相談窓口の設置・運用でお困りの担当者の方は、ぜひ以下のサービスをお役立てください。一緒に、機能する窓口をつくりましょう。
労務コンサルティングサービス|394864.jp

メンタルヘルス対策との一体的な取り組みをお考えの方には、こちらも参考にしていただければ幸いです。
ストレスチェック支援サービス|394864.jp

※本記事の内容は、令和8年4月5日現在における下記の資料に基づいたものです。最新の法令・通達等をご確認ください。

・労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(令和元年法律第24号による改正後のもの)
・事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)

この記事の著者 Writer

労務心理&AIパートナー

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